豊かな感性が育つお話絵本
おはなしひかりのくに
12月号 つるの おんがえし
対象年齢 012345
現代を代表する作家・画家の書き下ろし創作絵本。季節の話、昔話、ユーモア話、ファンタジーなど、バラエティーに富んだラインナップです。
AB判 36 ページ
定価430円(本体391円)
今月の作者インタビュー
あらすじ
けがをした鶴を助けたやすけ。
しばらくして、ひとりの女の人が家を訪ねてきました。
おはなしひかりのくに 12月号 作家
もとしたいづみ 先生
- Q1.
日本昔話『つるのおんがえし』を現代の子どもたちのために再話していただきました。悲しいだけではない、ふしぎな読後感があります。書く際に心掛けられたことなどはありますか?
- A1.
「のぞいてはいけないって言われたのに。約束を破っちゃダメだよねー」という教訓で終わるのもつまらないし、欲に目が眩んだり、興味本位で行動する『人間の弱さ』が印象に残る話になるのも、元々この話の持つ、優しい雰囲気が伝わらないと思いました。また読後感も、「悲しいお話だったね」だけでは寂しい。鶴は助けてもらったお礼をしたくて、人間の姿で若者のもとを訪れ、恩返しもできたし、少しの間だったけれど、二人で楽しい時を過ごすことができたのです。「二人は末長く幸せに暮らしましたとさ」ではなかったけれど、若者も鶴も、お互いのことをずっと忘れずに生きていくんだなあ、と思ってほしいです。
- Q2.
狩野富貴子先生の絵をご覧になっていかがでしたか?
- A2.
狩野富貴子先生の絵は、人の優しい心が静かに伝わってきて、それがじんわりと心に染み込んできます。なんと素晴らしい絵なのだろう!と感動しました。
- Q3.
印象的なシーン、お好きなシーンはどこでしょう?
- A3.
雪の中、傷ついた鶴を助けてやるシーンです。冷たい雪の中、痛々しい場面のはずなのに、とても美しく、正義感に満ちた若者の横顔と心配して見ているリスの姿も、暖かく、素敵だなあと見とれました。
- Q4.
もとした先生の書かれるひとつひとつの言葉にあたたかい力を感じます。子どもたち、また大人も、語彙を増やすためには何が大切だと思われますか?
- A4.
私も、自分の語彙の少なさを痛感していますが、語彙を増やすにはやはり多くの言葉と出会って、それを使い、自分のものにしていくしかないと思います。本を読んで知った言葉を、今この気持ちを言い表すのにピッタリ!という場面で使うとき、格別な喜びを感じますし、まわりの人から「そうそう!」と共感を得られるときのうれしさを子どもたちにもぜひ味わってほしいです。
おはなしひかりのくに 12月号 画家
狩野富貴子 先生
- Q1.
よく知られた昔話を、うつくしい絵で表現していただきました。絵のお仕事を始められたきっかけは何ですか?
- A1.
正式に絵の勉強をしたことはありません。絵を描くのが好きでしたので広告の仕事につきました。催事用のポスターやレタリングや広告イラストを描いていました。そんな時、新聞社の出版部長さんと民話研究をなさっている先生がご訪問くださり、民話絵本など5冊の本の絵を描く仕事をいただきました。まさかの出来事でしたが、絵本の仕事は魅力的ですっかり心奪われました。その後、毎日絵を描き、それを背負って東京の出版社まわりをしました。心細い出発でしたが出版各社のお力添えのおかげで34年間も絵を描き暮らせた日々。感謝でいっぱいです。
- Q2.
画材の話もお聞きしたいです。絵の具や紙、筆はどんなものを? どうしてそれを?
- A2.
質感や滲み具合が好きな紙があって画材屋さんから送ってもらっています。筆は手にとって感触を確かめて。高いものもありますが、100円ショップの筆も使います。色は、昔からある一般的な絵の具と、あとはお話に合わせて色鉛筆やパステル、ちょっと強くしたい時はアクリル絵の具も。何でも使います。
- Q3.
以前、台所が仕事場だとお伺いしましたが、今も変わりませんか?
- A3.
今も同じですよ。三歩で冷蔵庫、便利です。作業に詰まったときは目の前の出窓から、通る人を眺めたりします。
- Q4.
製作中に欠かせない『お供』は何かありますか? お気に入りの道具や、おやつなど。
- A4.
原稿をいただいたら、終わるまではかかりきりです。お腹が空いたら冷蔵庫へ。食べたい時が食べ時、気付いたら空っぽになっていることがあります。立てないくらい疲れても、描いているのは幸せですね。
- Q5.
小さな頃、どんなお子さんでしたか? その頃から絵を描くことはお好きでしたか?
- A5.
外で元気に遊ぶ子ではなかったですね。絵は夢中で描きました。終戦の後で、色鉛筆やクレヨンは学校でだけ使えるもの。台所の炭俵から取り出した木炭と新聞紙を持って、空襲を免れた近所のそうめん工場に行って、膝から何から真っ黒にしてセメントの床に描きました。そうめんを干してる時にやると怒られるから、干してない時に這いまわってね。
- Q6.
子どもに向けた作品を描かれる際に、大切にされていることはありますか?
- A6.
お話や作家さんの言葉と向き合って気持ちを動かすことは、自分と向き合うことでもあります。そこには大人も子どももないから、ただひたすら自分の全部をかけて描きます。理想にはなかなか辿り着かず、一生一番良い形を探り続けるしんどい仕事でもあるけれど、この世界に居させてもらえるのは何よりも幸せです。
- Q7.
子どもたちも園などで描画をします。絵を描くのが楽しくなる秘訣ってあるのでしょうか。
- A7.
大人に何と言われても、自分の描きたいものを好きに描いてほしいですね。
※このページで取り上げた絵本は書店では取り扱っておりません。
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